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カテゴリー "お酒の旅" の記事

お酒イベントレポ 【1】おもしろ酒蔵編


去る10月某日、師匠に誘われて名古屋のお酒イベントに行って参りました。

酒蔵さんやメーカーさんがブースを設けて自社商品を宣伝し、酒屋さんや飲食店の人々がそれを見て商談をする、という完全飲食業界向けのイベントなのですが、師匠が「私がどんな風にお酒をとらえているのか、蔵の人とどんな話をしているのか、勉強になると思いますよ」とおっしゃるもので、ふたつ返事で「行きます」と応え、ノコノコと着いてゆきました。

とてもおもしろくいろいろな発見があったので、今日から3回に分けてこのイベントのレポートをしていこうと思います。

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交通費をケチって夜行バスで名古屋へたどり着き、名刺入れをコインロッカーに閉じ込めるという愚行を働いたゆえに「編集&ライター」という手書きのネームプレートを首から提げ、自社商品を宣伝しようとするメーカーの人々を「エッ…?あ、飲食店の人じゃないんです、ね…」とガッカリさせながら会場内を闊歩していた完全アウェーなわたくしに対しても、丁寧に説明をしてくださった優しい酒蔵のみなさまがいらっしゃいました。

そのひとつが、漫画にもご登場いただいた若手酒蔵グループ「ナゴヤクラウド」。

名古屋にある山盛酒蔵金虎酒蔵東春酒造神の井酒蔵という4つの酒蔵から、後継者&営業の若手社員が集まり、4人でさまざまな活動を行っているのだそうです。

日本酒の若手グループといえば秋田の新政酒蔵さんらがやっているNEXT5しか知らなかったのですが、日本酒を広めるために精力的に活動する若手の人々が増えているんですね~。

ところでナゴヤクラウドさんの商品、
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こんな感じでパッケージがとってもオシャレなんですが、これらはすべてナゴヤクラウドさんが主宰しているラベルデザインコンテストの受賞作品なんだとか。
(上記URLから神の井さんのラベルもチェックできます♪)
専門学校や大学などの学生さんも多く応募しているこの企画、お酒を飲まない人々が増える中であらゆる世代の人に日本酒に親しんでもらえるめっちゃ良い取り組みだなぁと感動してしまいました。

ちなみにFacebookのページでは取り組みのアピールだけでなく「戦隊ヒーローだったらどの酒蔵が何色かな~」というようなことをキャッキャと話していたりしていて、読んでると楽しい気持ちになれるので(笑)興味のある人はぜひぜひ「いいね!」してみてくださいませ。

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そしてそのほか、とある酒蔵の営業さんと話していたら

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なぜかなんの脈絡もなくこんなことを言われた。

あまりにもトークがおもしろいので会話が盛り上がって名刺をいただき、御礼のメールをしたところ宛名が

自称燗つけ師・咲貴さま

になっていた。
わたしが自称したんじゃないよ!!!笑



ちなみに今回ご登場いただいた方々には、いずれも掲載の承諾を得ています。
みなさま、楽しい時間をありがとうございましたm(__)m

日本でいちばん遠い酒屋さん

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一度しかお会いしていないもので、記憶を頼りに描いた似顔絵が似ておらず申し訳ないです。
(次お会いしたらもう少し似せます…)



おいしいお酒と肴を求めて日本全国をうろうろしている木村ですが
(だいたい一人で夜行バスに乗ってゆき、現地の友達に案内してもらうことが多い)
そんな意図もなく出かけた旅先で、偶然おもしろいお店に出会いました。

場所は和歌山県・新宮。
学生時代のお師匠さんが小説家・中上健次への思い入れが深く、合宿などでその出身地であるこの地域に訪れることが何度かあったのですが、彼の存在如何に関わらずどうもこの土地のまとう空気が気に入り、「日本でいちばん遠い場所」(ともかく交通が不便!)であるにもかかわらず、卒業後も個人的にしばしば訪れていました。

8月最後の週末、熊野本宮大社で開催される八咫の火祭りを楽しんだ翌日、速玉大社を訪れ、雨に濡れてよりいっそう危険度が増した超急勾配の石段538段の下から神倉神社の本殿を仰ぎ、電車が来るまでしばらくあるからどう時間をつぶそうかとうろうろしていたときに目に入ったのが、道路沿いの道に佇む一軒の酒屋さん。

まあどんなときでも歩いていて酒屋があったら入るようにはしているのですが、漫画にあるように、和歌山といえば梅が名産だから、梅酒が好きな友人に一本手軽なものを買って行くか~と暖簾をくぐったら、目の前、人が一人ようやく立てるくらいの近距離にドーンと酒の棚が置いてある。
その、お客さんの動線よりも明らかに酒を置くことを優先した店内構造に「このお店、おもしろそうだな」とは思ったのですが(このとき外で待っていた友人を、なんかおもしろいに違いないから入れと引きずり込んだ)、何はともあれお土産を探すため、梅酒が並べてある棚を物色。

そこに近づいてきたのが、店長と思しき男性。
「友達に梅酒をあげたいんですが、ちょうどよいものはありますか?」
と聞いたところ、力強いまなざしで
「今探しているお酒に関しては、何が重要になりますか?」
と問われ、「あ、しまった、軽卒な聞き方をしてしまった」とすぐさま反省しつつ、しかしまだ様子を探るために
「お土産っぽさが伝わればいいんですが…」
と続けるわたしに、一つひとつの梅酒について説明をしながら、
「でもほんとうに“お土産っぽさ”を優先していいのか、飲み比べてみてください」
と、お猪口を差し出してくれました。

で、まあ、飲ませてくれた梅酒が、超~おんぃしい~わけです
梅酒って長期にわたって浸けることもあり、たいていはホワイトリカーなどの蒸留酒で仕込みますが、これは日本酒で仕込んでいるんだそう。
梅と日本酒両方のおいしさが楽しめるので、ストレートがオススメです。

超おんぃし~うえに、別に全然高くないので、店長さんが売り上げを目的としているわけではなく、ほんとうにおいしいものを勧めようとしてくれているのだということがよくわかりました。
これはこのままスイーティーな果実酒しか飲めない低度数アルコール消費型女子だとは思われたくない!!!(なんだそのプライドは)とムキになり、「オススメの日本酒を教えてもらっていいですか?」と勢いづく木村。

そこで次に問われたのが、漫画にもある
「ビールはプレモル派ですか?スーパードライ派ですか?」
という質問。
これは、香り高いもの(プレモル)が良いのか、スッキリ飲みやすいもの(スーパードライ)が良いのか、お客さんの好みを判断するための問いなのだそうです。

そのほかにもどんな日本酒を求めているのかを調べるために、
「日本酒だけで楽しみますか、それとも何か食事しながら一緒に飲みますか」
「肴はどんなものですか。さっぱりした刺身なのか、煮物のような味の濃いものなのか、…」
と、さまざまな質問をされました。

すごい…こうやって一人ひとりのお客さんにピッタリの一本を提案するんだ…!
と感動しながらわたしは飲み意地を張って全パターン飲みました。
(質問の意味ねえ!)

ちなみに、「口の中に前の酒が残ってるから、いまからちゃんと次のお酒を味わうために」と、うがい用のウーロン茶をくださるという徹底ぶりです。

遠方から来たらしい小娘が一口飲んじゃ感動し、一口飲んじゃ感動しと来るものだから、店長さんも美味い酒伝導師の血をかき立てられた様子で、

「じゃあ、いまから幻のお酒を飲ませてあげます。買えとは言いません。なぜなら買えないから。東京に戻って、こんな酒を飲んだとみんなに自慢してください」

と、常連客でも30ポイント(一升瓶1本で1ポイント)集めなければ手にする権利がないという超レアなお酒を一口、味わわせてくれました。

それがこちら、龍神丸の生原酒。
数年前に杜氏であるご主人が亡くなり、奥様が周りの人々の助けを受けながらなんとか立て直し、最高の評価を得られるお酒を生み出したという、とてもドラマチックなお酒です。

どうですか、と問う店長さんに
「わたし、おいしい日本酒って、とってもおいしいお水に、お米のいちばんおいしいところだけが溶けているような、透明感のあるお酒だと思うんですが、これはそれですね」
と言うと、手をブンブン振りながら
「それなんですっ!!!その表現、いただきました!!!今度から使わせてもらいますわ!!!」
と、超共感してくださいました。

すっかりアウェイな友人を差し置いて、いろんな種類のお酒があって、さまざまな雑味がそれぞれのうまみを出しもするけれど、ほんとうにおいしい日本酒というのは、とってもピュアなお酒なんだよね~と盛り上がる二人。
結果、店長さんとわたしはメル友になりました。



わたしがお持ち帰りしたのは、先ほど紹介した梅酒と、黒牛 本生無濾過
このお酒を売ってくれたときに、店長さんが
「このお酒はまだ若いから、キャップではなくラップなどで封をして、少し酸化させてあげるとよりいい味になりますよ
と教えてくれたのに驚きました。
なぜなら、日本酒というのはとてもデリケートなお酒で、鮮度を保つのが重要なので、冷暗所で保管し、開封したらなるべく早めに飲みきることが原則だと思っていたからです。
それが、日本酒も傷めず少しの熟成をさせることで、より味わい深くすることができるとは…。

自分にあるのが単なる机上の知識でしかなく、お酒を知るためには、教科書ではなくお酒そのものにこそ触れる必要があるのだと痛感。いや反省。
そんな大事なことを教えてくださった店長さんのことを、わたしは勝手に心の中で師匠とお呼びしております(すみません)。



で、そのお店の紹介をすっかりしそびれていたのですが、こちらです↓
地酒みゆきや
公共交通機関の時刻表を見るたびに絶望するような“日本でいちばん遠い場所”、ではありますが、たとえ片道数万をかけてでも行く価値のあるお店だと思います!